婚約破棄されたので、自由に生きることにしました
Chapter 1 — 婚約破棄されたので、自由に生きることにしました
冷たい石畳に叩きつけられた瞬間、前世の記憶が鮮明に蘇った。ここは、私が死ぬほどプレイした乙女ゲーム『ロイヤル・スカーレット』の世界。そして私は、主人公を虐め抜いた悪役令嬢、イザベラ・ド・ヴァロワに転生してしまったのだ。
「イザベラ!貴様のような悪女は、処刑されて当然だ!」
断頭台に引き立てられ、婚約者だったはずの王子、セバスチャンに憎悪に満ちた視線を浴びせられる。ゲームのシナリオ通りだ。ヒロイン、ソフィアが現れ、セバスチャンの腕に寄り添い、勝利を確信した顔で私を見下ろしている。
(なんてこと……本当に処刑されるの!?)
前世の私は、平凡なOLだった。会社帰りにトラックに轢かれて死んだはずなのに、なぜこんな悪役令嬢に?しかも、処刑される寸前だなんて。
「何か言い残すことはあるか、イザベラ?」
セバスチャンの冷酷な声が響く。私は必死に頭を働かせた。何か、この状況を打開する方法はないのか? ゲームの知識を総動員する。確か、この後、ソフィアが何か挑発的な言葉を言って、私が逆上して……それが決定的な処刑の理由になるはず。
「……ソフィア様。わたくし、あなたに謝らなければならないことがありますわ」
ソフィアは予想外の言葉に目を丸くした。セバスチャンも驚いたように私を見つめている。私は、震える声で続けた。
「今まで、あなたに酷いことをして、本当に申し訳ございませんでした。わたくしは、愚かで、嫉妬深く、醜い女でした。どうか、わたくしを許してください」
涙ながらに謝罪する私に、ソフィアは明らかに戸惑っている。シナリオが狂い始めたのだ。これで、処刑は回避できるかもしれない。しかし、その時、セバスチャンが予想外の言葉を口にした。
「イザベラ、お前は本当に変わったのか? それとも、何か企んでいるのか?」
彼の鋭い視線が私を射抜く。私は身を震わせた。セバスチャンの疑念を晴らさなければ、処刑は免れない。私は覚悟を決めて、彼の瞳を見つめ返した。
「セバスチャン様……わたくしは、本当に反省しています。どうか、わたくしにもう一度、チャンスをください」
私の言葉に、セバスチャンはしばらく沈黙した。そして、ゆっくりと口を開いた。
「……わかった。イザベラ、お前にチャンスをやろう。ただし、もし嘘をついているようなら、その時は容赦しない」
安堵したのも束の間、セバスチャンの次の言葉に、私は息を呑んだ。「お前には、次の婚約者を決めてもらう。一週間以内に、私に相応しい男を連れてこい。それができなければ、やはり処刑だ」